2008年12月25日

「コーポレートガバナンスと経営者の役割」

【再読み込み】
「第一章 コーポレートガバナンスと経営者の役割」亀川雅人
『ビジネスクリエイターと企業統治』(2005)

第1節 コーポレートガバナンスの定義
1.株主と経営者
◎株式会社;所有と経営の分離を前提→分離がガバナンス問題をより深刻化
所有者である株主は,専門経営者に経営を委託
→利害関係(支配や富の奪い合い)
バーリーとミーンズの論文を契機に,経営者の規律付けに関する論争(1)
 注1;経営者を規律づけるための手段としては,報酬契約や組織構造,あるいはストックオプションといった資金調達手段なども使われるが,一方で会社の評判や名誉なども重要なファクターになっている。(2)

◎株主がプリンシパル,経営者はエージェント(2)
 注2;コーポレート・ガバナンスの定義
   「株主の視点から,企業が公平・公正に利益最大化を追求するように,経営者を方向づけること」若杉(2004)p.5(2)

◎プリンシパルとエージェントの関係の複雑な様相
・株主と経営者が同一人格である企業
・経営者あるいは従業員が部分的に株式を所有している企業
・経営者と株主の利害の一致は,経営者の努力インセンティブを向上させる可能性を持つ一方,
経営者による議決権確保が努力インセンティブを低下させることも考えられる。(2)
 注3;株主の利益と債権者の利益は必ずしも一致しない。
    株主が有限責任であるため,高いリスクの投資機会を選択する可能性があるため。
    そのため,高い持ち株比率の経営者も長期的な企業の存続を前提に貸し付けた債権者の利益を損なうことがある。
手嶋(2004)(2)
【おお????債権者は、株主が有限責任であるため、これをリスクに織り込んで資本コストを要求するのだから,利益を損なったとしても想定内?】

プリンシパルを株主と定義
→株主の目的を達成するためのエージェント機能や組織のあり方を定義するのは難しい(2)
→社会的な視点から企業を位置づける際には,株主をプリンシパルにすることが企業のあるべき姿か否かについても議論の余地がある。
企業目的を株主の私的利潤追求とすれば,社会的公器としての企業の社会的責任は遂行できないという考え方が自然と生まれてくる。
公害問題などの社会的費用やさまざまなコンプライアンス問題が効率性の追求とともにコーポレートガバナンスの枠組みとして論じられることになる。

このような問題を踏まえ,コーポレート・ガバナンスを広義に定義
=企業における経営上の意思決定の仕組みであり,企業のパフォーマンスに関係する利害関係者相互の調整メカニズム全体を含む概念として捉えられる(3)


2.主権論と規範的モデル

◎主権論は3種類
・株主・・・バーりー&ミーンズ→バーナム→ガルブレイス
  近年の英米型経営を象徴する株主重視経営の企業観;株主と経営者の支配関係をめぐる攻防の歴史(3)
・経営者
  米国における60年代初頭の企業理論「経営者理論
  ボーモル,マリス,ウイリアムソン
・従業員・・・伊丹敬之
  日本で従来から議論 従業員重視経営
  企業の主権者は従業員であり,企業環境は,企業の内部者である従業員を中心に考察

経営者理論も従業員重視経営の議論;その目的は,
 企業の内部者としての経営者や従業員の所得や効用,あるいは福利厚生等の向上にあり,
 株主やその他の利害集団に対して相対的に配慮された意思決定がなされる。

 経営者や従業員が主役,株主は脇役。(4)

●コーポレートガナバンスとは

◎企業と社会の関係性
個々の企業経営が効率性を追求することで,システムとしての企業社会全体の富が損なわれるようでは意味が無い。
利害調整は,企業に直接関与する利害関係者の調整のみならず,企業を取り巻く環境との調整が必要。(4)
(企業を取り巻く環境との調整)のための各企業のコストは,市場競争のルール作りでもある。
市場のコストは新たな取引(ビジネス)が生まれるたびに問題になる。
コンプライアンスやCSR経営などはこうした市場ルールの外延である。(5)

制約条件下における企業目的の達成システムの問題。
=企業のあるべき姿を論じ,同時に現状とあるべき姿の乖離を議論。
→企業環境としての社会及び市場との関わりの中で考察しなければならない。
(5)

◎企業が存立する国や時代によって一律ではない。
企業と社会的な規範、あるいは市場のルールは、企業の存立する様々な条件のなかで、
利害調整を図りながら成立している。
それが、社会的な制度や慣習となっており、そうした制約条件のなかでコーポレートガバナンスが考察されなければならない。(5)

第2節 資本主義経済の理念型とガバナンス
◎資本主義経済の基本的な特徴
@私的財産制度
A交換経済(市場経済)
B利潤最大化
C生産要素の売買(6-7)

◎株主重視経営をめざす社会
摩擦のない市場経営・・・経営者や従業員の報酬は市場で決定される
株主重視経営・・・競争機能が必要
企業が目標どおりの利潤を達成できる社会や、経営者の報酬が経営者自身の自由に委ねられる社会は市場競争が機能しているとはいえない。
経営者支配=市場機能が劣化している状況
(10)

第3節 理念型のシステムと社会構造
有限責任と譲渡自由な株式制度により、資本家は分散投資をしつつリスクの高いビジネスプランを選好するようになる。
しかし、経営者や従業員はリスクの分散手段を有していない。
株主重視経営の際に考慮すべき問題でもある。(11 脚注13))


第4節 理念型企業システムとコーポレートガバナンス
◎条件
最適なコーポレートガバナンスを次の条件下で探索し続ける
・限定合理性(bounded rationality)
・機会主義(opportunism)
・情報の非対称性(17)

第5節 日本の企業システム


第6節 求められるコーポレートガバナンス
誰が,誰のために,いかなる方法で企業を運営するのか。
企業の環境が変化すれば企業のあるべき姿も変化する。
経済利潤の追求は,資本主義経済システムを堅持する限り変わりようがない。
利潤の追求方法が変化し,企業に関わる利害関係者の力関係が変化する。
所有と経営が分離する大企業では,専門経営者が企業の意思決定を支える構造になるのは理に適っており,企業の主役は資本家から経営者に移ることになる。(32)

◎株主重視の意味するところ
資本主義経済は,所有権者が経営者を評価するシステムを作っている。
企業の主役が経営者であっても,経営者に投票するのは資本家である。(33)

◎所有と経営の分離=成長可能な企業を探索する社会設計
→株式発行による増資は,経営者自身のビジョンを実現するために,
不特定多数の市場から他人の貯蓄を自己資本として利用する行為。(33)

◎金融資本市場=ビジョンを実現しようとする経営者の利害関係調整能力を評価する。(34)
posted by 平常心 at 12:43| Comment(1) | TrackBack(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
創成社が出版社
Posted by 平常心 at 2009年01月14日 14:08
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